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「はたらくデザイン」をめぐる対話

12経営者の自我が「はたらくデザイン」の世界観になる経営者の自我が「はたらくデザイン」の世界観になる
経営者の自我が「はたらくデザイン」の世界観になる

経営者の自我が「はたらくデザイン」の世界観になる

2018年においかぜ代表の柴田が立ち上げた「はたらくデザイン事業部」。
「はたらくデザイン」とは、働き方をより良くするための仕組みづくりや、新しいチャレンジができる環境づくりを通して、新たな「はたらく」をつくること。この考え方は、おいかぜの理念「だれかのおいかぜになる」とも通じ、全事業部の根底に流れるものでもあります。

本連載は、おいかぜ代表・柴田が、京都に縁のある経営者と「『はたらく』をデザインすること」について語り合う対談コンテンツです。今回はエピローグとして、一年間の対談の取材執筆を担当したライター・土門蘭が、柴田に単独インタビューを行いました。対談で得た気づきや学び、そしてこれからの「はたらくデザイン」について話し合います。

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はたらく
おいかぜ

でデザインする。

柴田 一哉

柴田 一哉

1977年京都府生まれ。ITインフラエンジニアを経て、2003年に京都市で株式会社おいかぜを設立。プロダクション(Webデザイン・グラフィックデザイン)、ITインフラ(サーバ・ネットワーク)、はたらくデザイン(業務改善・コンサルティング)の3事業を展開し、2023年に設立20周年を迎える。「だれかのおいかぜになる」をタグラインに、テクノロジーとデザインの領域を横断しながら、クライアントの課題に日々向き合っている。

CHAPTER01

定性的な価値を埋める「はたらくデザイン」

土門11名との対談が終わりましたね。一年間お疲れ様でした。

おいかぜ柴田

柴田お疲れ様でした。本当に学びが多い対談で、とても意味のある一年間だったなと思います。自分自身の定点観測でもあり、モチベーションアップの場でもありました。対談してくださった方には、感謝の気持ちでいっぱいですね。

土門この対談を通じて、柴田さんの中で変化はありましたか?

柴田そうですね。少しずつ考え方が変わっていったような気がします。お一人ずつと話す中で、「はたらくデザイン」の解像度がより上がっていきました。特に大きかったのは、田村さんの回で出てきた「働くことの定量的価値と定性的価値」についての話ですね。あの言語化は、自分の中では特にインパクトがありました。

土門今までの働き方改革では、給料や勤務時間という定量的な価値について言及されてきたけど、それ以外の定性的な価値もあるという話でしたよね。それは「働き方を自由に選べる」という価値なんじゃないか、と。

柴田はい。その定性的な価値こそが、「はたらくデザイン」が仕組みとして落とし込もうとしていたところだったなと、はっきり認識できた対談でした。そう考えると、昨今「働きやすさ」として語られていることは、ほぼ定性的なものなんですよ。リモートワークやダブルワークができるとか、会社にドリンクバーやオフィスグリコがあるみたいなのって、価値としては定量化しにくいものばかりなんですよね。
じゃあそういう、数字で表せない価値をどうやって定量化していくのか?っていう話に対して、田村さんがおっしゃっていたのは「僕のやるべきなのは、ルールで縛るのではなく、コミュニケーションで超えていくことなのかも」ということでした。「君にとっての価値は何?」「僕にとってはこういうことだよ」ってことをすり合わせ続ける。コミュニケーションをすることで、定量化までいかなくとも、お互いにある程度共通認識を持てる状態を作る。田村さんの言葉を聞いて、それはすごく大事だなと感じましたね。

対談風景

土門私がその話を聞いて思ったのは、「定性的な価値」って総括すると、「社員が自分で『はたらく』をデザインできること」なのかなと。

柴田ああ、 確かに。

土門だから「はたらくデザイン」って入れ子構造になっているのかなと感じました。経営者がみんなの「はたらく」をデザインした結果、そこで働くみんなが自分の「はたらく」をデザインできるようになる、みたいな。そういうところを目指していらっしゃるのかと思ったのですが。

柴田そうですね。働きやすいオブジェクトがあること自体を評価するというより、それを使ってどう「はたらく」をデザインできるかの自由度を評価するってことですね。だからいい会社作りには、定量的な価値と定性的な価値の2つが必要で、それらを組み合わせて自由に「はたらく」をデザインできる状態であることが重要になってくるんだと思います。そういう状況を作るのが「はたらくデザイン」で目指していることなのかなと、自分の中でより深掘ることができました。

土門最初の頃よりもかなり解像度が高くなりましたね。

柴田もともと「はたらくデザイン」って、働き方改革へのアンチテーゼみたいなものだったんですよ。労働時間を短くして給与を上げて……と社員にとって働きやすい状態になるのはいいけど、それでどうやって利益を上げていくのか誰にもわかっていない。「はたらくデザイン」は、まだ言及されていなかった定性の部分を埋めていこうとしているんだと思います。今回対談した経営者の皆さんは、そのバランスを考え続けていらっしゃる方ばかりだったので、すごく勉強になりました。

CHAPTER02

「こういう人だよ、おいかぜは」

土門それを踏まえて、今後やっていこうと思うのはどんなことでしょうか?

おいかぜ柴田

柴田これから大事にしていかないといけないなと思ったのは、世界観の提示です。これだけ働くことが多様化した今、「そもそも『はたらく』を自由にデザインするとはどういうことか」って、会社によって違うじゃないですか。そこを明確に提示しないと、働く人がその価値観を持ってるかどうかわかんないよなと。「うちの会社はこういう世界観で、こういう働き方で、こういう考え方でやってるよ」というのを、より明確にしてプレゼンテーションしていかないとだめだな、と思いました。

土門「働きやすい」って一言で言っても、人によって働きやすさは違うということですよね。自由度が高い方が働きやすい人もいれば、働きにくく感じる人もいるかもしれない。「うちの会社はこういう人たちに合う世界観だよ」というのを見せていきたいなって感じですか。

柴田というよりは、「こういう人だよ、おいかぜは」ってことを提示する方が先なのかもしれないですね。通常の求人情報って、給与とか休日とか福利厚生とか、定量的な価値は提示されていますよね。でも定性的な部分になると、「うちはこんな雰囲気ですよ」っていうふんわりした情報しか掲載されていなくて、それ以外の定性的な情報はSNSなどから取り入れるしかない。それって働く側にとっては、情報量が圧倒的に少ないと思うんです。その定性的な部分を企業側がもっとちゃんとプレゼンテーションしないと、「入ってみたけど思ったのと違うな」ってことが増える気がするんですよね。

土門なるほど。

柴田「世界観」と言うと抽象度が高いけれど、要はその会社における定量・定性の価値をきちんと提示していくことなんだと思います。そうでないと、マッチングがうまくいかないだろうと。

社内風景

土門それで言うと、世界観の提示方法の一つとして、ぬえさんの回で出た人事評価制度が挙げられるかもしれないですね。あの評価基準のグラフって、「ぬえはこういう人を評価する」「こういうスタイルで利益を上げていく」という意思表示であり、イコールぬえさんの世界観なんじゃないかなと。それを見るだけで、「うちはこういう雰囲気だよ」と言葉を重ねられるよりも、ずっと雰囲気が伝わりますよね。

柴田その通りだと思います。

ぬえさんの人事評価基準を表した円グラフ

ぬえさんの人事評価基準を表した円グラフ

土門これまでの求人情報は、応募者がそこで働く価値を評価するページだった。でも企業の評価制度を見ると、企業の求める価値が一目でわかる。それは一つの世界観の提示としてはわかりやすいなと感じました。

CHAPTER03

企業の世界観は、経営者の自我

おいかぜ柴田

柴田そう考えるとやっぱり……企業の世界観って経営者の自我なんですよね。土門さん、前にVoicyで、「自意識」と「自我」の違いについて話していたじゃないですか。

土門「自我」は自分が本当に望んでいることで、「自意識」は周りから望まれていること、みたいな話ですね。

柴田そう。その言葉を借りると、これからの僕に必要なのは「経営者としてどういう自我があるのかを、ちゃんと提示せよ」ってことだと思う。もっと自分が望んでいることを会社に反映させないと、世界観は確立できないんじゃないかなと。
僕が働き方改革に対してしっくりきていないのって、自我じゃなくて自意識で成り立っているからなんですよね。「世の中的にどう見られているか」を念頭に置いた施策なので。

土門ブラックだと思われないための……。

柴田そうそう。僕はずっとそこに違和感があるんです。それは本質的ではないよなと。だから「はたらくデザイン」って言い出したんだと思います。
まさに今回対談した11名は、みんな自我のある方ばっかりでした。自分が無意識にそういう方を選んでいたんだと思うんですが、話しているうちに僕の「はたらくデザイン」ってぬるいなと思うようになって。もともと僕は自意識が強いので……。

土門そうなんですか?

柴田そうなんです。もちろん自意識が強いからこそうまくいっていることもあるんですけどね。でも、これからの世の中で会社をプレゼンテーションするには、自我が強くないと多分成り立たない。多様化の時代において自意識で動いていたら、ただの汎用化になってしまうので。だから働き方改革みたいなのっておもしろくないし、無意味なように見えるんですよね。

土門よく柴田さんは対談で「自分はやりたいことがない」っておっしゃっていましたけど、自我があまり表に出ないのもそれと関係がありますか?

おいかぜ柴田

柴田実は「やりたいことがない」っていうのも自意識で言っているんですよね(笑)。やりたいことがある人のカウンターというか。だからもう少し丁寧に言うと、「やりたいことがない」って、要は「僕が主体である必要がない」ってことなんです。誰かが素敵なことをやっている、それに対して伴走や下支えをするのはやりたい。だから、正確に言うとやりたいことがないわけじゃないんです。

土門「やりたいことがある人を支えたい」というのが、柴田さんのやりたいこと、つまり自我なんですね。

柴田そう。なのに、今までは「やりたいことがないけど動ける人」っていうポジションが空いているから、「やりたいことがない」って言っていました。これからはそんなふうに自意識で語るんじゃなくて、「いや違う、僕は誰かのおいかぜになりたいんだ」って自我で語ればいいんだと思います。「おいかぜになりたい」と思っている自我を、どのように会社に反映していくか。それが多分、この11人との対談で得た一番の学びなのかもしれないです。

CHAPTER04

自意識ではない、自我での働き方改革

土門それを踏まえて、今後「はたらくデザイン」はどんなふうにアップデートされるんでしょうか。

おいかぜ柴田

柴田「はたらくデザイン」のアップデートは、イコール僕の経営者としてのアップデートではないかと思っています。この1年は、会社経営の中でいろんな浮き沈みがあって、自分の力量について考えさせられる期間でもありました。定性的な価値の具現化や、定量的な価値と定性的な価値のバランス、定性的な部分をどうコミュニケーションで乗り越えていくのか……など、いろんな課題があるなと思います。でも一番は、やっぱりさっき言った「自我を世界観に反映させること」ですね。

土門まずは自我からいきますか。

柴田はい。おいかぜや僕自身を俯瞰したときに、やっぱり「おいかぜ」らしいポジションだなっていう自覚はずっとあるし、それで仕事につながる状況を作れているとは思うんです。ただ、そこからずっと抜け切れていないという自覚もあって。なぜかというと、やっぱり自我が少ないからだと思います。「もっとこういうクォリティでやりたい」とか「もっとこうしたい」とか、僕はもともとあんまり言わない方なんですよ。でも、言った方がいいんですよね、多分。

土門柴田さんは、割と受け入れがちなんですね。

柴田受け入れすぎなところがあるんです。でもこれからはちゃんと自我、ひいては世界観を前に出していきたい。世界観ありきの働き方や仕組み作りをしないと、選ばれる存在にならないし、こっちから選ぶこともできないですからね。今後はよりそういう時代になっていくと思うので、「自意識ではない、自我での働き方改革をせよ」ってことなんだと思っています。それを、対談相手の皆さんが教えてくれたような気がしますね。「はたらくデザイン」を提唱してから5年かけてようやく、自分なりの気づきを得られました。

CHAPTER05

自我の正体は使命感?

事務所内風景

柴田僕が今回対談した人たちは、みんな自我で動いている方だったなと思います。自分がどうしてもやらざるを得ない、みたいなものを感じる。でも、正直僕は、どうしても自分がやらないといけない、みたいに感じたことが少ないんですよ。別にやりたいことがなくても「会社という運動体のフックになるポイントを作らなきゃ」とか「これをやると、おいかぜはこういうふうに見られるだろうな」みたいな感じで動いていて。

土門動機が「どうしてもしたいから」っていうよりは、「周りから見たときこう映るから」みたいな?

柴田そう。ちょっと疑問なんですけど、「これをやりたい」と思った時、人はどうやってそれを自我か自意識か判別するんですかね。本当にこれが自我なのか?ってわかんないんじゃないかな……。

土門うーん。多分それは使命感だと思います。SOU・SOUの若林さんも「やりたいことがない」とおっしゃっていましたが「やらなあかんことの中でできることをやってる」ともおっしゃっていたじゃないですか。その使命感こそが、自我なんじゃないですかね。

柴田ああ、使命感か。

土門使命感があると、続くじゃないですか。仮に多くの人に評価されなくても、すぐ成功しなくても、自分が大事だと思うからやり続けることができる。それはまさに、自意識ではなく自我だよなぁと思うのですが。

柴田なるほど。それで言うと僕の中にも、「おいかぜという存在をやり抜く」っていう使命感はあるかもしれない。

対談風景

土門それが自我なんじゃないでしょうか。さらにそれを研ぎ澄ますとしたら、おそらく次のフェーズは、何を吹かせたいのか見極めていくことなんじゃないかなと思います。今もされていると思いますが、「この仕事は意味があるから必ずやろう」とか「この人は絶対に応援しよう」とか。そういうのはありますか?

柴田僕が応援したいのは、自我で動いてる人ですね。つまり、「自我で動いている人のおいかぜになる」ことが、僕の自我なのかな。

土門逆に、自意識で動いてる人のおいかぜにはなりたくないと。

柴田そういうことです。だから僕自身も前に出ないんですよ。僕が前に出ると自意識で動くことになるので、僕はNo.1じゃなくていい。自我がある人のNo.2になったり、その人のおいかぜになることが僕の自我なんだっていう。そう考えたら、今めちゃくちゃしっくりきています。

CHAPTER06

健やかにみんなを取り巻くおいかぜに

土門最後に、おいかぜ自体の今後の抱負があれば教えてください。

おいかぜ柴田

柴田さっき協業の話に触れましたが、今おいかぜは、この対談でも登場していただいたウエダ本社さん、マガザンさん、それぞれと業務提携を行っています。まさに強い自我を持った2社のおいかぜに、今後どのようにしてなっていくのかが、この5年、10年の一つの大きなキーワードだと思います。

土門自我を持って、自我のある人たちのおいかぜになる、と。

柴田そう。これまでは「経営者はやりたいことがなきゃだめ」とか「夢がなきゃだめ」っていう考え方が主流だったけれど、自我って別にそれだけじゃないんですよね。夢のある人を支えるとか、おいかぜになるってことも自我としてある。その体現が世界観に繋がるのかなと。ただ、強い自我を持った人のアウトプットは強い世界観になるけれど、おいかぜの世界観はそれとはちょっと違うものになるかもしれません。

土門そうかもしれないですね。自我の強い人の世界観が、コンセプトのあるテーマパークのような密度の高いものだとしたら、なんとなくおいかぜの世界観は、それらを包括するゆったりとした街とか雰囲気とか……。

柴田それらを取り巻く空気、まさに風ですよね。

土門ああ、そうですね。風が吹いて空気がいいとみんな健やかに過ごせる、みたいな。そういうイメージがおいかぜの世界観なのかなというふうに思いますね。

柴田うん、そうですね。

土門改めて20周年おめでとうございます。今後のおいかぜさん、そしてはたらくデザインの展開を楽しみにしています。

柴田ありがとうございます!

MEMO

一年間、柴田さんと10名の経営者の方の「はたらくデザイン」をめぐる対話にライターとして伴走させていただきました。いろんな切り口から言葉を重ねることで、「はたらく」をデザインするとはどういうことなのかどんどん解像度が上がっていくのが、横で見ていてとてもおもしろかったです。私自身の「はたらく」も、この連載で確実にアップデートされました。一年間、誠にありがとうございました!

取材・文
土門蘭
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